久留米の古民家で「番茶専門店」 各地に根付くお茶の魅力伝えたい

  • 2019.5.20

 飲食店なども見当たらないのどかな住宅地に、白いのれんがはためく日本家屋が1軒。遠方からわざわざ訪れる人もいる、福岡県久留米市の番茶専門店「茶舗ふりゅう」だ。店主の池松伸彦さんに、そのこだわりを聞いた。

Q. 「番茶」とはどんなお茶ですか

 自分の考える「番茶」は、それぞれの地方で昔から親しまれている、いわゆる「地方番茶」と呼ばれるお茶のこと。よそから見たら珍しいけれど、地域の人にはなじみ深い、郷土料理のような存在です。

 「おばんざい」とか「ばん傘」とか、「ばん」という言葉には「普段使い」という意味があります。お茶と聞くと「茶の湯」を思い浮かべることも多いと思いますが、一般的な緑茶が流通する前から、庶民の間ではその土地ならではのお茶を楽しむ習慣があったんです。日本各地を回ってそういった地方番茶を仕入れたり、九州の素材を使ったオリジナルブレンドのお茶を作ったりして販売しています。

 【写真前列中央:バタバタ茶/黒茶を煮出し、バタバタと音を立てながら茶せんで泡立てていただく。昔は塩をちょっと混ぜていたそう(30g 500円)。前列右端:乳酸菌発酵茶/漬物のように茶葉を漬け込んで発酵させたもの。独特の酸味があり、健康茶としても人気。元は茶がゆに使われていた(40g 2200円)】

Q. 番茶専門店を開いたきっかけは

 
 
 僕はもともと、将来は音楽を楽しみながら人が集まれるカフェバーのような場所を作りたいと思っていました。それならコーヒーや紅茶を提供することになるので勉強しておこうと考えて、本を読んだり、カフェを巡ったりしていたんです。

 コーヒーに比べて紅茶の店は少ないなと思っていた時に、佐賀市にある国産紅茶の専門店「紅葉(くれは)」さんと出合い、話を聞くうちにどんどん興味がわいてきました。子どもの頃からお茶はとても身近なものでしたが、それにスポットを当てた店がないと気づいて。だったら自分がやろうと、この仕事を始めたんです。

Q. どんな準備をして開店したのですか

 23歳で会社を辞めて、最初は店舗を持たずにお茶の卸業としてスタートしました。まだ若かったし家庭も持っていなかったので、とにかくやってみたいという思いのほうが強くて。開店資金や蓄えもほとんどなく、今同じことをやれといわれたら怖くてできないかもしれません。

 イベントに出店したり、店に卸したりするうちに、もっとお茶の話をしたり、ゆっくり選んだりできるような店舗が欲しいと思うようになって、2015年の11月にこの店をオープンしました。

 この店はもともとは普通の民家で、かなり傷んだ状態でした。業者に依頼し、店舗として使えるように約70万円で壁や天井を整えてもらいました。壁塗りや店舗のレイアウトは自分でDIYしました。

 物販の店舗としてスタートしたので、水回りの工事や設備などが要らず、飲食店などよりは費用がかからなかったと思います。

Q. 未経験からのスタートは順調でしたか

 最初はこれだけで食べていけず、アルバイトをしながら、カフェや小売店などの卸先を増やそうと営業活動をしていました。

 僕はコミュニケーションも特にうまくありませんが、お茶の話ならできます。お茶が好きで、その楽しさをもっといろんな方に広めたいという思いで続けてきました。その後、口コミなどで少しずつお客さまも増えてきて、バイトを辞められたのは今から4~5年前でした。

 【写真:たけがや焙ジ茶 /佐賀・武雄と熊本・南関の無農薬栽培レモングラスをほうじ茶に。さっぱりした味わいと爽やかな香りが楽しめる(30g 847円)】

Q. これにはお金を惜しまない!というものは何ですか

 お茶と急須ですね。取り扱っている茶葉の中で一番高いものは50g 3000円の「風流」です。

 「風流」は、樹齢100年以上にもなる在来品種の茶葉を使っています。挿し木から育てる品種のお茶と違い、種から育てる「在来」は同じ茶園でも1本1本個性が異なり、まるで自然がブレンドしたような味わい深いお茶になります。

 全国の茶園面積の2%ほどしかない希少なお茶で、力強く華やかな香りが特徴です。

 急須は、常滑焼の平型が好きです。本体とふたがぴったり合っていて、ここまで精度の高い物はなかなかないんです。陶器は焼くと生地が縮むのでずれが生じることも多く、熟練の職人でも難しいと言われています。

 口が広いので、蓋を開けておけば1煎目の湯冷ましができ、2煎目、3煎目は蓋を閉めて冷めにくくできます。茶葉が重なる面も少ないので、一枚一枚きれいに開いて、最後までおいしくいただけます。

 一つ2万~3万円以上する物もありますが、使う人のことを考えて作られていて、おいしいお茶をいれるためには欠かせないものです。

 【写真:常滑焼 平型急須無地鉄色 (磯部輝之作 1万7000円)】
 
  【写真:常滑焼 平型急須印花(磯部輝之作 2万4000円)】
 

Q. 池松さんの考えるお茶の魅力って何ですか?

 お茶はいれ方で味わいが変えられるところが面白いんです。熱湯で煎れると香りが立つし、氷水などでゆっくり時間をかけて出すと甘みが増します。同じ茶葉でも、水の温度や量、抽出時間の違いで、味わいも香りも全く違います。いつでもいれたてを味わうことができるし、自分の好みを探すのも楽しいですよ。

 
 日本では、お茶って外食したときに「タダで出てくるもの」というイメージがありますが、コーヒーや紅茶を楽しむのと同じように、お金を払ってでも楽しみたい「嗜好品」としての魅力を伝えていきたいです。

 幅広い楽しみ方をもっとたくさんの人に知ってもらえるように、今後はカフェスペースもある店舗を作りたいですね。

※価格はすべて税抜

番茶専門店 茶舗ふりゅう 代表 池松伸彦

 1986年生まれ、福岡県出身。お茶の魅力にはまり、より深く学ぶためにお茶メーカーに勤務。お茶ざんまいの日々を経て卸業として独立し、2015年11月に「茶舗ふりゅう」をオープン。各地で日常的に愛されてきた「番茶」の魅力を広めるべく、店舗運営のほか、イベントなどにも積極的に参加し、じわじわとファンを広げている。

 

 番茶専門店 茶舗ふりゅう

 福岡県久留米市津福本町1863-3
 TEL:0942-55-8386
 HP

※情報は2019.5.20時点のものです

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