これが本当の宝石箱や~ 福岡発「食べるアート」大人気

  • 2019.6.3

 花畑のようなお弁当、宝石と思ってしまうほどの色鮮やかなお菓子。これらの美しい光景をうっとりと眺める時間は、まるでアート鑑賞に似ている。ただ決定的に違うのは、食べられるということ。手掛けるのは、野菜や果物が持つ自然本来の色を生かし芸術的に“食”を作り上げるフードクリエイター集団「harapecolab(ハラペコラボ)」(福岡市)。日本中の人々をとりこにする、クリエーティブでアートな食べ物はどうやって生まれるのか。代表の野尻ともみさんに思いを尋ねてきました。

Q. 「harapecolab」を始めたきっかけは

 私はもともと食べることが大好きで、東京で20代のころから友人たちと「ハラペコ会」と題し、ごはんを作って、空間演出して、食べて……とケータリングに近いことを楽しんでいました。夫の転勤で福岡に移住し、本格的にケータリングを展開しようと2013年にharapecolabを立ち上げました。

 途中でカフェの立ち上げと運営を任せてもらった経験も大きな糧になりました。ただ当時は、自分の中で「こうあるべきだ!」という厳しいルールを設けていたので、1人でたくさんのことに取り組み、今よりストイックで表情も全然違っていたと思います。けれど2人目の子どもの妊娠を機に、「これからはやりたいことだけをやろう」とシンプルな考え方になりました。育児や家事で忙しく、仕事の時間が限られるのも大きな理由。あれもこれもやっていたら結局、手が回りませんから。

 私の場合は、鮮やかな野菜や食用花を自然のままアートのように表現して、純粋においしく楽しく食べてもらいたいと、今のスタイルに集中しました。harapecolabの立ち上げ後はしばらく私1人でやっていましたが、今は信頼できるスタッフと共に、ケータリング、そしてお弁当やお菓子を展開しています。

Q. アートな食を生み出す感性はどこから?

 父が大工だったので、実家の作業場には常に職人さんがいて、ものづくりが当たり前に行われる環境で育ちました。興味があればまず手を動かしてみるし、頭でイメージしたものを作り上げることも大好き。

 高校卒業後は美術大学へ進み、建築やデザインの他、生け花を学びました。私の先生は剣山を使わずに植物同士のバランスをとって自立させる生け花をしていたので、それが今の私の感性やスタイルにつながっているんでしょうね。

 お弁当では野菜のスライスを仕切りに使って、隣り合う食材の相性、色のバランス、立体感にもこだわって作っています。

Q. 食を通じて伝えたい思いとは?

 大人って日頃からいろいろ忙しくて、自分のためだけに時間を割くことが難しいですよね。そんな多忙な毎日だからこそ、せめてharapecolabと関わる時間だけは、誰にも邪魔されずに食事を楽しんだり、乙女心を取り戻したり、自分の「ご褒美タイム」を堪能してもらいたいなと思っています。

【写真:ケータリングで人気の「サラダロード」。色とりどりの野菜や果物、ローストビーフ、オムレツなどがテーブルの上に連なり、華々しい道になっている】

 お弁当一つにしてもそう。開いた瞬間から、胸をキュンとさせるときめきを与えたい。そして、見た目の美しさだけじゃなくて、味もよくあるべきです。おいしい野菜をさらにおいしく食べられるように、野菜や食用花は必ず旬の物を使って、相性のいい肉料理や魚料理と合わせて箸が進む献立にしています。また、昔の人たちの知恵に習って、デトックスにいい食材や調理法などを少し取り入れているんです。こっそり、マクロビオティックと薬膳のいいとこ取りをしています。

 「写真より実物の方が美しくて、見た目以上においしくて、おいしい上にヘルシー」と、喜びと満足感を膨らませる存在でありたいです。実際に女性のお客さまが「私の中に眠っていた乙女が目を覚ました〜」と喜んでくださるので私もうれしいです。

Q. 子ども向けのワークショップも人気ですね

 自家製ソースとこだわり無農薬野菜を画材にした、「食べられるアート」のワークショップをちょこちょこ開いています。野菜嫌いの子もまずは触ってみるだけでOK。こんな面白い野菜があるんだと存在を知って、触れて、楽しんでみてもらいたい。そんなコンセプトでやっています。形や色など野菜の個性を面白がりながら、一口食べてみて、今まで食べられなかったものを克服できたらラッキー。野菜嫌いの克服はあくまで「おまけ」という感じで、何かいいきっかけになればうれしいです。

 あとは、私みたいな大人がいることも知ってほしい。テーブルの上にお花畑を作るおかしな大人がいるよ。だから君たちも自由に好きなことをしていいんだよ。そんなふうに伝わればいいなと思います。

Q. 「こうぶつヲカシ」とは

 鉱物の形をしたお菓子です。手間暇も原価もかかっているのに、最初の設定額が安すぎました。運営費、人件費までカバーできず、パンクしてしまうと気づいて、慌てて価格設定を見直しました。ちなみに、こうぶつヲカシの包装は500円くらいかかっています。

 箱やタグにはロゴ入りのオリジナルを製作したり、ショップカードやパンフレット、包装紙もこだわったり。たとえ費用がかさんでも、料理やお菓子と同じようにパッケージでもうちの世界観を表現したいですし、絶対手を抜きたくないんです。

 中身だけでなく全体の世界観まで上質に仕上げることが、価値を上げるのではないでしょうか。今、全国でリピーターになってくださる方が増えているのは、何よりの証だなと感じています。

「こうぶつヲカシ」(9粒箱入り3000円)
こうぶつヲカシ・オンラインショップ

Q. 出版予定のアートブックとは

 サラダをテーブル上に道のように敷き詰めた「サラダロード」のアートブックを制作中です。これまでケータリングでいろんなサラダロードを作ってきましたが、素材の組み合わせや光のバランスなど、理想型を追究しながら作品撮りをしています。時間をかけて撮影をしているので、完成は来年頭くらいかなと。彩りもデザインもまったく異なる、世界に一つだけのサラダロードを20パターンほど載せた「よだれが出るアートブック」となる予定です。楽しみに待っていてください。

 

harapecolab 野尻 ともみ

 静岡県出身。大工の父の影響でものづくりに興味を持ち、多摩美術大学に進学。建築・不動産業界を経て、結婚を機に福岡へ移住。趣味で開いていたホームパーティー「ハラペコ会」をベースに、2008年からケータリング事業harapecolab(ハラペコラボ)を本格的に始める。アート×フードの美しいケータリングやワークショップを展開。2017年10月には鉱石の形をした「こうぶつヲカシ」を販売し、人気が全国に拡散。

harapecolabアトリエ
福岡市南区寺塚2-8-1 金子アベニュー200棟212号室
080-3951-1708

※火~金曜はコウブツ食堂をアトリエにて営業(ランチタイムのみ) 
※営業時間は要確認、土曜・日祝日は休み
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※情報は2019.6.3時点のものです

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