映画「凪待ち」主演の香取慎吾さんと白石和弥監督にインタビュー

 宮城県石巻市を舞台に、恋人を殺され堕落していく主人公の“喪失と再生”を描いた映画「凪(なぎ)待ち」が6月28日(金)に公開されました。映画「孤狼の血」の白石和弥監督と、香取慎吾さんが初タッグを組んだヒューマンドラマです。2人に作品への思いを聞きました。

香取慎吾さん(写真左)と白石和也監督

香取慎吾さん(写真左)と白石和也監督


—福岡へようこそ。

香取 今日は福岡に来られてうれしいです。

白石
 ちょうど1年前に宮城県石巻市で撮影した作品です。ようやく完成披露で福岡に来られて、皆さんに見てもらえるのがうれしいです。

—白石監督が、東日本大震災の被災地・石巻を舞台に、1人の男の“喪失と再生”を描いた理由は?

白石 転がり落ちてもやり直せる。そんなメッセージを具現化したくて。東日本大震災から7年(撮影時)たった今の東北を切り取りたいという思いもありました。被災地を訪れたこともある香取さんとなら、人間ドラマを紡いでいけるのではと思い、この題材にたどり着きました。

「転がり落ちてもやり直せるというメッセージを具現化したかった」と白石監督

—香取さんにはかつてない“汚れ”役。挑戦だったのでは?

香取 挑戦というより、ワクワクしながら演じました。挑戦といえば、過去に“孫悟空”や“ハットリくん”になったこともあるので(笑)。それに比べたら、今回は人間。あまり経験のない役柄でしたが、実年齢とも近く、面白かったです。「あまり見たことがない香取慎吾が見られる」と皆さん言ってくださいますが、白石監督が新たな僕を引き出してくれたように感じます。

「あまり経験のない役柄でしたが実年齢とも近く、面白く演じた」と香取さん

—香取さんは第一印象を大切にするため、脚本は1度読んだだけで撮影に臨むそうですね。

香取 実はギリギリまでやりたくないだけという(笑)。10代の頃、時代劇の撮影前に熱心に台本を読み込んでいたら、すごく緊張して…。その緊張に耐えられずにやめました。本番からカットまでの短い時間に監督の期待を超えられるか、その瞬間で勝負したい。最近は、そう言うようにしています(笑)

白石 トップアイドルとして、エンターテイナーとしての香取さんをずっと見てきましたが、改めて一緒に仕事をして、日本のトップ俳優でもあると感じました。落ちていく役でありながら、色っぽく存在感がある。芝居のつくり方が素晴らしく、むしろ僕の方が勉強することばかりでした。

—白石監督の現場は、台本にない要求も多いそうで。

白石 本当に申し訳ございませんでした(笑)。不思議ですが、映画って用意周到じゃないからこそ生まれるエネルギー、瞬間があるのも事実。台本には「殴られる」と書いてないけど、1発ぐらいいいかな、とか。そういうむちゃなお願いにも香取さんは期待以上に応えてくれました。この作品はあまり説明しない部分も多いのですが、(主人公の恋人を演じる)西田尚美さんやリリー・フランキーさんらが映画に深みを与えてくれたように思います。西田さん演じる亜弓の娘・美波を演じた恒松祐里ちゃんは良い意味で香取さんをリードしている場面があり、頼もしかったですね。

香取 (祐里ちゃんは)カットがかかった瞬間に「あ~、緊張した~」って言うんですけど、「どこが?」って驚かされる。本当に将来が楽しみな女優さんです。

「香取さんは、むちゃなお願いにも応えてくれました」(白石監督)

—最後にメッセージを。

香取
 ギャンブルのシーンや暴力的なシーンもありますが、根本は人間ドラマ。心の絆や優しさ、苦悩があふれていて、見終わった後は自分の人生と合わせて、皆で話をしたくなるような映画です。

白石
 主人公の郁男や彼を取り巻く環境、ロケ地の東北に、少しでも“凪”が訪れてほしいな、と。登場人物に愛を注ぎながら作りました。見た後はすごく優しい気持ちになれる映画だと、勝手に思っています。

<プロフィル>
香取 慎吾(かとり・しんご)
 1977年生まれ。神奈川県出身。91年にCDデビュー。主な出演作は、ドラマ「新選組!」「西遊記」、映画「THE 有頂天ホテル」「西遊記」「ザ・マジックアワー」「座頭市 THE LAST」「クソ野郎と美しき世界」など。
白石 和也(しらいし・かずや)
 1974年生まれ。北海道出身。2013年公開の映画「凶悪」で新藤兼人賞金賞、第37回日本アカデミー賞の優秀作品賞や脚本賞を受賞。主な作品は「日本で一番悪い奴(やつ)ら」「彼女がその名を知らない鳥たち」「孤狼の血」「麻雀(マージャン)放浪記2020」など。

◆作品について「凪待ち」公式サイト

※情報は2019.7.4時点のものです

秋吉真由美

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