車いす陸上選手 小西恵子さんにインタビュー

陸上をやめられない。

そのことに気付いたことが強み

 

 

SPO×JOは、スポーツと関わりながら輝いている女性に注目しています。

そんな女性の一人、小西恵子さんに出会いました。

小西さんは車いす陸上の選手です。

とっても根性が必要なスポーツに挑戦しているのに、

第一印象は控えめで、楚々とした女性。

ちょっと想像に反するものでした。

 

こちらが小西恵子さんです。

 

 

優しい笑顔が心に残る小西恵子さん!

優しい笑顔が心に残る小西恵子さん!

 

 

福岡市内にある「障がい者スポーツ選手雇用センター シーズアスリート」

という団体をご存知でしょうか。

仕事と選手活動を両立させている

パラリンピック選手たちが中心となって運営している団体です。

このような運営形態は全国でも珍しく、

いま6人のパラリンピックアスリートが所属しています。

 

小西さんは、このシーズアスリートに所属しています。

1978年5月20日広島県生まれ、神戸市在住。

国内外の数多くの大会で活躍し、

2013年には「平成25年度兵庫県スポーツ優秀選手賞」なども受賞。

2016年のリオパラリンピックを目指して練習に励んでいました。

 

 

トラックを疾走する小西さん。凛々しい…♡ 写真/シーズアスリート

トラックを疾走する小西さん。凛々しい…♡ 写真/シーズアスリート

 

 

ところが昨年、床ずれの手術を受けて3カ月間、入院。

今年5月2日の「大分パラリンピック陸上2015」への出場で、

トラック競技大会に復帰を果たしたのです。

 

当然、タイムは大きく落ちていました。

100mで2秒、200mで4秒。

「こんなんじゃ、お話しにならないんです」と悔しさをにじませる一方で、

「でも入院して、わかったこともありました」と、次のように話してくれました。

 

「入院前は、パラリンピックを目指すことに迷いがありませんでした。

きっと行ける、がんばればあの場所に立てる。そう思って疑いませんでした。

だから、選考に関係のある記録に一喜一憂していました。

でも、これってある意味、視野が狭いですよね。

 

退院後、やっぱり走りたいと思ったんです。

タイムも悪くなったのに、なぜ走るんだろう。やめてもいいんじゃないの?

なんて真剣に考えて…

 

でも、私は好きだから走っているんです。だから、陸上がやめられない。

それがわかったらふっきれました。

そのことに気付いたことを強みに頑張りたいですね」

 

 

道具を生かした自分の体の使い方を探っていく

 

ところで、車いす陸上って見たことありますか?

テレビなどで見たことのある人は多いかもしれません。

競技用車いすは、街で見かける一般的な車いすよりシャープなデザイン。

アスリートは、上体をたたんだような姿勢でそれに乗り、

駆け抜けていきます。

 

そしてこれが、その競技用車いすです。

 

 

座席が狭い! でも、ちょっと乗ってみたいですね 写真/シーズアスリート

座席が狭い! でも、ちょっと乗ってみたいですね 写真/シーズアスリート

 

 

ずいぶんシンプルな形ですよね。

とても軽いように見えますが、約7kgあるそうです。

 

自分の体重プラス、約7kgもある競技用車いすを

腕の力だけで、スピード全開で走らせているのでしょうか?!

 

だとしたら、腕が筋肉隆々になっていそうですが、

小西さんを見たところ、きゃしゃなようです。

 

「腕だけでこがないように、と先輩アスリートによく言われます。

背中を意識して体全体で動かす感じでしょうか。

 

でも、ひと言で車いす陸上といっても、選手たちの状態は人それぞれ。

腕に障害がある選手もいれば、上半身の機能が失われている選手もいる。

それぞれの選手が、道具を生かした自分の体の使い方を探っていくのです」

 

そうなのか…。

障がい者アスリートは、一人一人障がいの種類や重度も異なる中、

同じ競技に挑戦するんですね。

 

ちなみに、車いす陸上には100m、200m、400mの短距離、

800m、1500mの中距離、5000mと10000mの長距離、

そしてリレー競争などのトラック種目と、マラソンなどのロード種目があります。

小西さんは主に短距離に出場する選手です。

 

また、競技に関する規則も細かくいろいろとあるようです。

例えば、「車いす本体は地面からの高さ最高50cmまでの位置」とか、

「車いすのどの部分も、後輪の最後部を結んだ垂直面から後方に突き出てはならない」

とか、「車いすを推進するどんな機械的ギアやレバーも使用してはならない」とか、

「競技者は競技中、下肢のどの部分も地面またはトラックに接触しないようにしなくてはならない」…などなど。

 

ほとんど知らなかった車いす陸上の世界。

自身の障がいやいろいろな規定と折り合いをつけながら、

みんな懸命に限界に挑戦しているんですね。

 

 

 

 

いい記録が出たら、ごほうびなんていらない

 

小西さんは、6歳の時に家で逆立ちをしていて体勢をくずし、

脊髄を損傷して車いすの生活になりました。

その時点では、子どもだったせいかショックは大きくなかったそうです。

 

でも思春期を迎えて好きな人ができたとき、

「自分は他の人とは違うんだ」と改めて考え込んだといいます。

 

スポーツに出合ったのは高校生のときですが、

陸上ではなくテニスでした。

その後、29歳で陸上競技に転向。

「一人でこつこつ練習できるところが性格的にも合っているし、

働きながら練習するにも、個人でできる陸上の方が良いですね」と言います。

 

 

チューブを使ってインナーの筋肉を鍛える 写真/シーズアスリート

チューブを使ってインナーの筋肉を鍛える 写真/シーズアスリート

 

 

こつこつ練習…これってアスリートなら

誰もがやっていることなのでしょうが、

小西さんには特にその才能があったようです。

 

「小さいころから負けず嫌いでした。

遊びで友だちとバトミントンをしても、

負けると必死で練習してましたね。

負けたくない、というより、うまくなりたいという気持ち。

走るのが遅かったら、速くなりたい。

そういう性格だから、個人種目が合っているかもしれません」

 

でも、時にはモチベーションが下がることもあるはずです。

そんなときは、どうやってやる気を持続させるのでしょうか。

「今回の入院中も、かなり落ち込んだんです。

こんなところで寝てる場合じゃないのに…って。

でも、どうしようもない。

 

そんなとき、会社の人が電話や色紙に書いたメッセージで

励ましてくれたんです。

自分一人でがんばっていると思っていたのに、

そんなありがたい環境にいたんだと気付かされました」

 

いい記録が出たり、練習の成果が出たときは、

自分にごほうびとか、考えてるのでは?

 

「いい記録が出たら、

ごほうびなんていらないくらい嬉しいものですよ!」

 

と小西さんの声が跳ね上がりました。

 

「先日の大分の大会の記録を、次の大会で1秒でも縮めること。

いまは、それだけを考えています」

 

 

 

できるだけ長く競技人生を続けたい

 

現在、神戸市でだんな様と暮らしている小西さん。

在宅勤務でパソコンを使った仕事をしながら練習に取り組んでいます。

月に1回、福岡市のシーズアスリートに出勤するほか

講演活動を行っています。

 

結婚6年目。だんな様も元車いす陸上の選手だったそうです。

彼の魅力を聞いてみると、

「楽観的で、私のすることに文句や要求をしないところ」

とのこと。

 

記録が伸びずに、選手生活をやめようかと悩んだときも、

「まだまだやりようが足りないんだよ。やったらいいじゃん」

と彼が軽く放った一言で、心がすっとほどけたそうです。

 

「今は、できる限り長く走り続けたい。

道具も良くなってきているし、実際、50代で最前線で闘う選手もいるんです。

私はどこまでやれるか挑戦したい」

 

入院を経て、陸上競技への愛情が深まったようですね。

 

 

 

できる限り走り続けたいという小西さん  写真/シーズアスリート

できる限り走り続けたいという小西さん  写真/シーズアスリート

 

 

パラリンピックアスリートの挑戦する姿を見るとき、

自分だったらできるだろうか。走るだろうか。

そんな風に、ついつい考えてしまいます。

背景にある努力や挫折を想像すると、

なんて強い人たちなんだろう、と圧倒されることもあります。

 

だからこそ、小西さんのように爽やかに、軽やかに努力する

パラリンピックアスリートを応援したくなるのでしょう。

 

 

 

 

 

【小西恵子さんの成績】

2011年ジャパンパラリンピック(大分) 100m1位(当時日本新)

2013年九州チャレンジ陸上競技大会 100m1位(大会記録)

        〟                200m1位(大会記録)

2014年Swiss Open Nationals 100m 3位

2014年Daniela jutzeler Memorial 200m 1位

 

 

 

 

 

  • 次回、小西恵子さん出場大会

7月4日(土)、5日(日)

IPC公認 第20回関東身体障害者陸上競技選手権大会

会場は町田市立陸上競技場(東京都田市小野路町1255)

 

結果も報告しますので、チェックしてくださいね!

 

 

 

※情報は2015.6.16時点のものです

障がい者スポーツ選手雇用センター 「C's Athlete」事務局

住所〒810-0001福岡県福岡市中央区天神2-8-41 福岡市朝日会館
TEL092(711)1800
URLhttp://athlete.ahc-net.co.jp/

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