鎮魂の芸能「能」に生きる 多久島法子さん(能楽師)

みなさんは能の舞台を見たことはありますか?ユネスコの世界無形文化遺産にも認定された日本が誇る伝統芸能「能」。今回は、全国でも珍しく、九州ではただ一人30代の若手女性能楽師として活躍している多久島 法子 さんをインタビューしました。

Q)能との出会いを教えてください。

A)初舞台は2才でした。曾祖父がアマチュアから始め、祖父の代からプロになり、父も受け継ぎました。私は、家族から「能をやりなさい」と言われたことも無く、生まれた時から、能が身近にあることが当たり前の環境で育ちました。

Q)別の道を考えたことはありましたか?

A)ありませんでしたね。能楽師として生きることを、使命と感じていて、これに奮い立たされます。母のお腹の中にいる時から、血として受け継がれていたんだと感じています。

Q)大学に進学されて、その後すぐにプロになったのですか?

A)東京藝術大学音楽学部邦楽科にて4年間学び、卒業後は、大阪で7年、内弟子修行を致しました。

Q)修行中はどんなことをするのですか?

A)装束を作ったり、竹を割って、大道具、小道具を作ったり、藁屋を一から作ったり。業者にお願いするのが一般的でしたが、自分達でできるものは、全部作りました。他にもお金の管理や、公演の案内、資料作成など、おかげでなんでもできるようになりました。もちろん併せて、自分の舞台の稽古にも励みました。

Q)『能』とは、どんなものだと感じていますか?

A)能は、表現を削ぎ落とした世界です。所作を抑えた中に、精神面、魂を爆発させる世界です。能の物語は特徴的で、主役である『シテ』の人生だけにスポットが当てられます。一般的なドラマは、主人公の周りにいる重要人物の背景や経緯なども描かれます。しかし能にあるのは、ただ唯一『シテ』の人生だけなのです。

Q)能の面白さは、どんな所にありますか?

A)能は、女性、恋愛、愛を描いた演目が多いんです。そこには、憎悪、妬み、嫉妬、恨み、羞恥心が描かれ、その為に鬼になったり、呪ったり、、、。見て下さるお客様は、自分自身に中にある、その隠された感情の存在に気づきながらも、押し隠して、毎日を上手に生きています。能は、私達の中に押し隠される、その隠し通せない、本能のような魂の爆発が描かれています。これが、能の面白さだと思います。

Q)昨夏は能に関するイベントをされたそうですね。

A)能を楽しむエッセンスを共有できたらと、バックヤードツアーを開催しました。能を見たことが無い、興味はあるけど機会がなかったと言われる方など、たくさんの方が参加して下さいました。

Q)能を楽しむエッセンスを教えてください。

A)紐解くと面白い!というコトです。女性が鬼になることには理由がある。上手に生きているけど隠せない、抑えられない情念がある。その一つ一つは、時代は変われど、今の世を生きる、私達の中に必ず隠されているものなのです。能のストーリーには、自分自身を見せつけられる、突き動かされるものがあります。ストーリーを紐解いて、知って頂いて、そして、舞台を楽しんで頂けたらと思います。

Q)バックヤードツアーを終えて、どう感じましたか?

A)能は、鎮魂の芸能です。人を演じることと併せて、人と関わっていくことの大切さを感じました。能楽師だからこそ伝えられるものがあります。たくさんの方達と、舞台の外でも、能について共有し、関わらせて頂きたいと思いました。

【編集後記】

能は、女性が主人公で、恋愛のついてのお話が多い。生身の女性が感じ、胸に抱くどうにもできない苦悩や表現は、女性だからこそ理解し表現されるものがあると思います。私達と同じ時代に生きる彼女が演じる『能』という世界。今も昔も変わらない、女の本能の丈がそこにはありました。彼女が表現していく、私達一人一人の中に眠る魂の爆発の世界。法子さんの活躍に目が離せません。

(長谷川春奈)

※情報は2014.5.17時点のものです

多久島法子さん

能楽師 シテ方 観世流。

1981年生まれ。全国でも数少ない若手女性プロ。東京芸術大学音楽部邦楽科能楽専攻で、最優秀者に与えられる「安宅賞」を受賞。父親は能楽師の多久島利之さん。

 

多久島法子さんのブログ:

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福岡の好きなところは?
百道浜(福岡市早良区)の海沿いを散歩します。街も整備されているし、雑踏にまみれていない感じが、歩いていてとても気持ちがイイです。

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