
「九博」ロゴや「伊都菜彩」の文字を担当 書家の西尾真紀さん
今回お話をうかがったのは、書家の西尾真紀さん(39)です。
西尾さんは、福岡県太宰府市出身。10歳で書道を始め、「もっとうまくなりたい」と、太宰府高校の書道コースに進学。現在は同県筑紫野市にアトリエを構え、書やロゴの制作など、さまざまな仕事に励んでおられます。
―書の道に進んだきっかけは。
10歳で書を習い始めました。字をうまく書けたときに褒めてもらえるのがうれしく、もっと上達したいと、福岡県内で唯一、書道科のある福岡県立太宰府高校に進みました。ここで、書の恩師となる森史陽先生、そして彫刻家である担任の津留誠一先生と出会いました。森先生は、私の字の特徴を生かした指導をしてくださいました。20年たった今も、指導を受けています。津留先生からは、視野を広げることを学びました。
それで、大学は国学院大学の経済学部に進み、いったん書から離れました。が、結局、音楽を流しながら字を書いたりするサークルをつくるなど書の世界に戻ってきました。
言葉を発しなくとも喜怒哀楽を表現できるところが、書の魅力です。
――大学卒業後、いったん就職されたのですね。
化粧品会社に就職しましたが、やはり書にかかわる仕事がしたいと退職。書道具を持って東京へ行き、就職活動をしました。その後、縁あって福岡市の広告デザイン会社に入り、11年勤務しました。ロゴの制作や、お客さまの目の前で行う書のイベントなど、書に関するいろいろな仕事をしました。
――東日本大震災のときは、現地に行かれたそうですね。
何か自分にできることはないかと、被災地に向かいました。宮城県南三陸町、石巻市、女川町などを十数回訪れました。避難所で「亡くなった家族の名前を書いてほしい」、「『希望』という字を書いてほしい」など、被災者の方々の要望に応えました。被災地の人たちを元気づけたいと思って向かいましたが、結果的には自分が元気をもらって帰ってきました。
――独立して5年。今の仕事内容は。
店舗のロゴ、パッケージ文字などのほか、個人宅の表札なども書いています。九州国立博物館(福岡県太宰府市)のロゴマークや、福岡県糸島市の直売所「伊都菜彩」、うどん店の「小麦冶(こむぎや)」(本店・福岡市)の文字などを書かせていただきました。最近では、太宰府市が水道普及促進のために水道水を詰めたペットボトル「古都太宰府の水」の文字を書かせていただきました。
ホームページを見たという遠方の人からも注文があります。お墓の字、和菓子店の文字、高校の剣道部の横断幕の揮毫(きごう)など、さまざまな依頼があります。
2年前からは書道教室も始め、子どもから大人まで約30人に教えています。
―心掛けていることはありますか。
感性を磨くため本物に触れようと、美術館や博物館に足を運びます。5年前には、42日間かけて、アジアやヨーロッパ10カ国の世界遺産を巡る旅をしました。最も印象に残っているのは、カンボジアです。人々の笑顔と、素朴な自然に癒やされました。この旅をきっかけに、表現の引き出しが増えたと感じています。
―これからの抱負は。
5年後、10年後に表現力が高まっているよう、日々の修練を積みたいです。
※情報は2017.6.12時点のものです
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