福岡市美術館の学芸員 休館中の今、どんなことをしているの?

 今回は、福岡市美術館の学芸員、鬼本佳代子さん(44)にインタビューしました。

福岡市美術館はリニューアルのため、2019年3月まで休館中です。

現在、同館の学芸員さんたちはどんな仕事をしているの?と思っている方々も多いかもしれません。今年度から来年度にかけては、学校や公民館などに出向き、美術館の楽しさを伝える活動に励んでおられます。

今回は、公民館での、子どもを対象としたワークショップを見学させていただきました。笑顔を絶やさず、子どもに分かりやすく説明する姿が印象的でした。

8月上旬に、福岡市内で開催されたワークショップで、小学生に解説する鬼本さん

8月上旬に、福岡市内で開催されたワークショップで、小学生に解説する鬼本さん

――学芸員という仕事を選んだ理由は。

 もともと絵を描くのが好きでした。大学進学時、恩師の勧めもあって制作よりも研究を選び、美術史を専攻しました。大学院まで進みましたが、大学に残って研究を続けるよりも、学芸員としていろんな活動をする方が性に合っていると思うようになりました。そんなとき、福岡市美術館が教育普及専門の学芸員を募集していることを知り、面接を受けて入職しました。節目節目で、相談に乗ってくれ、冷静に考えてくれる良い先生や先輩に巡り会えたことも、幸せでした。

――福岡市美術館は改装のため休館中ですが、今はどんな仕事が中心ですか。

 所蔵品のレプリカなどを教材に、学校や公民館に出向いて作品に親しんでもらう「どこでも美術館(通称:DOCOBI=ドコビ)」を来年度まで実施しています。市内の公共施設で、子どもたちを対象としたワークショップも開いています。先日は公民館で、器の破片を見せ、全体像を想像して絵に描いてもらったのですが、それぞれいろんな絵を描いていて、面白かったですね。

レプリカを見たり触ったりする子どもたちに、美術鑑賞の楽しさを伝える

レプリカを見たり触ったりする子どもたちに、美術鑑賞の楽しさを伝える

――東日本大震災の被災地を訪れているそうですね。

 大震災後、全国の美術館と博物館が連携し、被災地の子どもを励ます「こども☆ひかりプロジェクト」が発足しました。その一員として、東北、福島などの被災地を訪れています。子どもに笑顔を届けたいという一心で活動しています。

――福岡での勤務は、15年以上になりますね。印象に残っていることはありますか。

 大阪府茨木市出身で、大学、大学院も大阪でした。福岡に来た当初は、こちらの言葉が聞き取れず、電話でのやりとりにとても苦労しました。会話のテンポも違いますね。「日本列島は長い!」とつくづく思いました。

――海外訪問も多いのですか?

 15世紀の宗教画を研究していたため、学生時代はベルギー、イタリア、フランス、イギリス、ドイツなどを訪れました。社会人になってからは、調査のために米国ニューヨークに何度か滞在しました。各国を訪れて、さまざまな価値観があることを知ったのが、今の仕事に役立っています。美術館・博物館のモノやコトの提示の仕方も、利用者の利用方法も本当にさまざまで、日本の美術館・博物館のあり方が「当たり前」ではないと知ったのも、貴重な経験でした。

 ちなみに、ヨーロッパや米国の美術館では、訪れる人同士がよくしゃべっています。日本ではいつから「美術館では静かにする」となったのか、いつも不思議に思います。

――今後の抱負をお聞かせください。

 作品鑑賞を通して、自分と向き合い、自分の世界を広げられるのが美術館、博物館の魅力です。また、自分の視点を養える場でもあると思っています。これらを多くの人に伝えていきたいと思います。

――最後に、リニューアルする福岡市美術館についてPRを。

 2019年3月にリニューアルオープンする予定です。外観はあまり変わらないのですが、1階にカフェがオープンします。ミュージアムショップも2階から1階に移り、1階ロビーが「気軽に立ち寄れて、ちょっと一息つけるスペース」に生まれ変わります。

また、大濠公園を散策する人が美術館を訪れやすいように、公園との間にあった垣根や中庭が広々としたアプローチ(通路)に生まれ変わります。なだらかなスロープも造られます。どうぞご期待ください。

専門は美術館教育。「ミュージアムの面白さを多くの人に知ってもらいたい」

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※情報は2017.8.19時点のものです

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