スピルバーグ監督最新作『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』をリポート☆

©Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC

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スティーヴン・スピルバーグ監督の最新作『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』。3月30日(金)の公開に先駆けて完成披露試写会が開催され、ひと足早く、その作品の醍醐味と魅力に触れてきました。

メリル・ストリープ&トム・ハンクスというハリウッドを代表する2大名優の初共演作。そして巨匠、スティーヴン・スピルバーグ監督の最新作である本作品の見どころをたっぷりとご紹介します。

【決断(けつだん)】

1.きっぱりと心を決めること。

2.是非善悪を見定めて裁くこと。

――「大辞林第三版」より

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亡き父と夫が残した新聞社を引き継ぎ、慣れない会社経営に奮闘する主人公、キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)。時は1970年代初頭。アメリカでは、長引くベトナム戦争に対する厭戦感と強権的な政府への不満が高まっていた。

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そうしたなか、有力紙、ニューヨーク・タイムズが、ベトナム戦争に関する国家最高機密文書の存在をスクープ。キャサリンが自らの片腕としてヘッドハントした編集主幹、ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は、その最高機密文書こと『ペンタゴン・ペーパーズ』の全容解明、そして全国民への公表に向けて奔走する。

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そして、キャサリンの元に届けられた衝撃の事実。公にするか否か。政府との闘い、会社の存続、経営者としての誇り。一人の女性として、そして一人の人間として、キャサリンに決断の時が訪れようとしていたーー。

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は、国家とは何か、報道の自由とは何か、その本質を問いかける作品であるとともに、政治の闇と男性偏向の社会(会社)に翻弄される一人の女性経営者の物語でもあります。

男性中心の社会(会社)で女性がオーナーシップやリーダーシップを取ることの難しさ。メリル・ストリープが演じるキャサリン・グラハムの不安と戸惑いは、多くの人の共感を得るものです。

また、一人の為政者によって報道の自由がないがしろにされる脅威をあからさまに描くとともに、新聞をはじめとするマスメディアの存在意義を明確に訴えた作品でもあり、“マスメディアが真のマスメディアとしてあり続けるためには、真実を伝えようとする強い意思と信念が不可欠である”という真理を、トム・ハンクス演じるベン・ブラッドリーの鋭いまなざしが教えてくれます。

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そして最も強く感じたのが、映画という表現手段の力強さとしなやかさ。監督のスティーヴン・スピルバーグは本作品の撮影を35ミリフィルムで行い、1970年代のアメリカを見事に再現。新聞社の編集室に漂う煙草の煙までもが、当時のものであるかのようなリアリティにあふれ、単なる政治批判に終わらず、一つの芸術作品の極みに達しているところが、巨匠の巨匠たるゆえんだと感じます。

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一切の飾りを取り払ったリアリズムあふれる1時間56分。流れるエンドロールに思わずふうっと息を漏らしてしまうハイテンポでスリリングな展開。

人は「会社」のために生きているのではなく、「社会」のために生きているーー

人生には「覚悟」する時、「決断」すべき瞬間があるーー

そんな思いがこみ上げてくる話題作『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は3月30日(金)公開。ぜひ劇場のスクリーンで見ていただきたい一本です。

ライター:西山健太郎

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の魅力を100%味わうための5つのキーワード 

■ペンタゴン

アメリカ合衆国国防総省のこと。その通称はバージニア州アーリントンにある本庁舎の形が五角形(pentagon)であることに由来する。本作品には、1961年から1968年までジョン・F・ケネディ、リンドン・ジョンソン大統領の下でペンタゴンの最高司令官・国防長官を務めたロバート・マクナマラがキーマンとして登場する。 

■ベトナム戦争

ベトナムの統一をめぐる戦争。1960年に結成された南ベトナム解放民族戦線が、1961年北ベトナムの支援のもとに南ベトナム政府に対して本格的な抗争を開始。1963年にはアメリカが全面的に軍事介入したが、1973年の和平協定により撤退。1975年南ベトナム政府が崩壊、翌年に南北が統一された。最終的には58,220人のアメリカ兵が死亡し、100万人以上の命が犠牲になったといわれている。

■ウォーターゲート事件

1972年6月17日、アメリカの首都・ワシントンD.C.のウォーターゲート・ビルにある民主党全国委員会本部に共和党のニクソン大統領の再選支持派が盗聴装置を仕掛けようとして逮捕された事件。ニクソン大統領辞任の引き金となった大スキャンダル事件で、泥沼化するベトナム戦争と相まって米国国民の政府への不信が強まる起因となった。

■ニュースペーパー

現在、アメリカ国内にはウォールストリート・ジャーナル、USAトゥデイといった2大全国紙のほか、ニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズ、ワシントン・ポストなどを筆頭に数千もの地方紙が存在するといわれている。本作品では、国家最高機密文書を巡る新聞社同士の競争と葛藤が濃密に描かれている。 

■スティーヴン・スピルバーグ

史上最高の累計興行収入を誇る映画監督。これまでに『JAWS/ジョーズ』、『E.T.』、『インディ・ジョーンズ』シリーズ、『ジュラシック・パーク』といった大作を手がけ、数多くの賞を受賞してきた。1993年、ユダヤ人たちをナチスの虐殺から救った実在の人物を描いた『シンドラーのリスト』でアカデミー賞作品賞・監督賞を受賞。1998年には『プライベート・ライアン』で2度目のアカデミー賞監督賞ほか5部門を受賞。本作品は、トランプ大統領就任直後、進行中の別の作品の制作を一時中断して制作が遂行された。

※情報は2018.3.6時点のものです

西山健太郎

1978年福岡市生まれ。2017年2月、樋口一幸氏(Bar Higuchi店主、ウイスキートーク福岡・実行委員長)とともに、福岡の飲食文化・芸術文化に関する情報発信を行う非営利団体「福博ツナグ文藝社」を設立。西日本新聞社のアート情報サイト・ARTNE(アルトネ)でのアートイベントレポート・若手アーティストインタビューやリビング福岡ウェブサイトでの“福岡の美しい日常風景”をテーマにした写真コラム「福岡風景/Fukuoka View」の連載など、独自の切り口で情報発信を続けている。

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