あなたにとっての太陽は、誰ですか?/映画『君が君で君だ』劇場鑑賞レポート

【ひまわり(向日葵)】

キク科の大形一年草。北アメリカ原産。茎は直立し、高さ2メートル 内外。葉は心臓形。夏、茎頂に径20センチメートルほどの黄色の頭花をつける。種子は食用とし、また油を採る。花は太陽の動きにつれて回るといわれるが、それほど動かない。

――「大辞林第三版」より

映画監督・松居大悟の最新作『君が君で君だ』は、狂気と熱情と切なさが漂う、愛の物語。

日本語教師になるという夢を求めて、生まれ育った韓国を離れ、日本でつつましく暮らすヒロイン・ソン。そのソンを「姫」と崇める三人の男たち。「姫」が好む、尾崎豊、ブラッド・ピット、そして坂本龍馬に同化した三人は、向かいのアパートの一室に「姫を守るための国」を作り、彼女を文字通り “見守る” 日々を送る。そしてある日、ソンのもとに借金取りが現れ、三人の「国」には不穏な空気が流れ始める。

この映画は、“太陽とひまわり” を描いた作品です。

常に太陽の方角を向いて直立するひまわり。けっして届くことのない太陽に、精一杯背伸びをして満開の花を咲かせ続けるのが、自らの宿命だと悟っているかのように・・・。

我が子や親、パートナーに対して、永遠の愛をささげる・・・。言葉で言うのは簡単ですが、時が過ぎ、環境が移ろい、互いの関係性や距離感が変わっていく中で、相手の全てを包み込む寛容さを保ち、無償の愛を注ぎ続けるのは容易ではありません。

規範や制度に囲まれた社会の中で暮らし、すべての生き物が生来的に持つ本能・習性を失ってしまった人間という存在。実はこの地球上において、一番哀れな生き物なのではないだろうか・・・。

劇中で尾崎、ブラピ、坂本の三人がさらけ出す異常かつ狂気的な愛​のカタチを目の当たりにして、ふとそんなことが頭に浮かびました。

個性的な俳優陣が創り出す濃密な世界。まるで小劇場の客席にいて至近距離から舞台を見ているような興奮を覚えます。そして、作品のアウトラインをなぞる尾崎豊の名曲の数々。

鬼才・松居大悟が生み出す唯一無二の芸術的世界観。ぜひ劇場のスクリーンで味わっていただきたい作品です。

ライター:西山健太郎

『君が君で君だ』
【監督】松居大悟
【出演】池松壮亮/キム・コッピ/満島真之介/大倉孝二/向井理/YOUほか

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映画「君が君で君だ」 T・ジョイ博多で上映中!

※情報は2018.7.20時点のものです

西山健太郎

1978年福岡市生まれ。2017年2月、樋口一幸氏(Bar Higuchi店主、ウイスキートーク福岡・実行委員長)とともに、福岡の飲食文化・芸術文化に関する情報発信を行う非営利団体「福博ツナグ文藝社」を設立。西日本新聞社のアート情報サイト・ARTNE(アルトネ)でのアートイベントレポート・若手アーティストインタビューやリビング福岡ウェブサイトでの“福岡の美しい日常風景”をテーマにした写真コラム「福岡風景/Fukuoka View」の連載など、独自の切り口で情報発信を続けている。

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