【動画あり】北九州発のゴスペルグループ 危機乗り越え、歌い続ける22年

 米国の黒人たちが生み出した賛美歌・ゴスペルを歌い続けるグループがいる。北九州市で22年前に発足し、福岡市や山口県内にも拠点を持つ「エンジェリックシャウト」(AS)。創設した指導者の急逝で一時は存続が危ぶまれたが、会員たちの奮闘で解散危機を乗り越え、新たな指導者を迎えて再出発。各地でレッスンを重ね、熱い歌声を響かせている。

中山栄嗣さん(手前)の指導でレッスンに励み、張りのある歌声を響かせるエンジェリックシャウト福岡のメンバーら =福岡市中央区の教会

 ASは教会で誕生した。学生時代からジャズ歌手として活動していた北九州市出身の佐藤美紀子さんが1997年、信徒として交流のあった同市小倉北区の教会に音楽教室を開き、これを母体に結成した。信仰や経験の有無を問わず、教職経験もある彼女の丁寧な指導ぶりが好評を集め、希望者が殺到。99年に福岡市、2004年には山口県の美祢市と宇部市の教会にも拠点ができた。

 結成の背景に全国的なゴスペルブームがあった。関係者によると、ゴスペルを題材にした米映画「天使にラブ・ソングを」(1992年公開)の大ヒットでファンが急増。その後、平井堅さんやMISIAさんらゴスペルに通じるミュージシャンの活躍もあり、幅広い世代に浸透したらしい。

 会員は4地区で計100人近くにまで拡大。九州・山口でライブやイベント出演をこなし、活動は軌道に乗りだしたが、突然の悲劇がグループを襲った。2011年4月、佐藤さんが病気で他界。45歳だった。

故佐藤美紀子さん(中央、提供写真)

 指導者を突然失った会員たちは悲しみと喪失感で混乱した。退会者が相次ぎ解散を検討する声も一時上がったが、各地区とも活動継続を決意。各地区で佐藤さんの指導法を共有し、「学び合う」練習を重ねた。

 12年秋、待望の新指導者を迎えた。福岡市出身のゴスペル歌手、中山栄嗣さん(31)。大半の会員よりも年下だが、ステージ経験も豊富な実力派。AS事務局長の三根ひとみさん(44)=山口県下関市=は「渇ききった私たちの心を満たしてくれた」と振り返る。

 現在、会員は計約80人の男女。年齢層は20~80代と幅広く、会社員や看護師、主婦、定年退職者…と顔触れも多彩だ。レッスンは月3~4回。うち1回は中山さんの巡回指導を受け、歌声に磨きを掛けている。

エンジェリックシャウトの全メンバーが集結し、熱い歌声を披露する「全員集合ライブ」の一場面(提供写真)

 ASは毎年初秋、全会員が出演する「全員集合ライブ」を地区持ち回りで開いており、今年は8月31日に福岡市西区の西市民センターで計画。福岡地区メンバーで実行委員会をつくり、準備を進める。実行委の只松佳奈子さん(48)は「音楽を通じて一人一人に与えられた光をより多くの人と分かち合い、ともに輝き合うのが信条。ぜひ私たちの歌声に触れてほしい」と話している。
全員集合ライブ特設サイト

 

「心身ともに若く」「オンオフ切り替えに」「友だちができた」…人生楽しむ“シャウト”磨く

 ゴスペルは19世紀後半の米各地で起きた信仰復興運動で歌われ、叫ぶような歌唱法が特徴。レイ・チャールズやジェームズ・ブラウンらが築いたソウル音楽の源流といえる。そんな音楽を歌い続けるグループはどんな人たちで構成し、ゴスペルとどう向き合っているのか。福岡地区メンバーのレッスンをのぞくと―。

ボンベで酸素を吸入しながら、洋楽曲の歌詞カードを手に笑顔でレッスンを受ける平川あいさん(左)

 ある夜、福岡市中央区の教会講堂。男女17人が半円状に並んで中山栄嗣さんを囲み、洋楽曲の合唱練習に臨んでいた。手元にはルビ入りの歌詞カード。楽譜はない。思い思いにステップを踏み、中山さんのリードに合わせるリズムとメロディー。声質、声量にばらつきはあるが、歌声は響き合い、ハーモニーをつくる。

 最年長メンバーの国松靖生さん(65)は学生時代から洋楽ファン。「ずっと聴く側。聴かせる側に立つのが夢だった」。練習を重ねて声域が2音上がったといい、「体も気持ちも若返った気分です」と笑う。

 ソロパートの練習をしていた会社員の二見早希子さん(32)。週の半分は出張先泊まりという多忙な彼女は「オンオフの切り替えにはゴスペルが一番。プライベートで落ち込んだ時も乗り越えられた」と語る。

 一人、いすに座って歌うのは平川あい(33)さん。足元には酸素ボンベ。結節性硬化症とリンパ脈管筋腫症の二つの難病と闘いながら母(65)と妹(23)と一緒に活動。笑顔で「友だちができて楽しい。カラオケも上手になりたいな」―。

 「一人一人に与えられた光をより多くの人と分かち合い、輝き合う」。グループの信条はそのままメンバーの原動力となり、人生を楽しむシャウト(叫び)は多くの人に届きそうだ。

=2019/07/31 西日本新聞=

※情報は2019.8.7時点のものです

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