故郷の風景を最後にもう一度~ ダムの底に沈む集落跡をたどるバスツアー

2017年度末に完成予定の県営伊良原ダム(みやこ町犀川下伊良原)。ダム建設によって水没する故郷の風景をもう一度目に焼き付けたいと、地区住民有志の主催によるバスツアーが6月18日に開催されました。

バスツアーは、路線バスの愛好サークル「砂津本陣會總本部」が運営に協力。同サークルは、廃止されたバス路線を貸切バスで巡るオフ会を定期的に行っており、今年3月のオフ会で、かつてバス路線があった伊良原地域を巡ろうと、福岡県のダム事務所から許可を得てダム底となる通行止め区間を走行しました。これが今回の地元向けバスツアー開催のきっかけです。

3月のオフ会の後、ダム底をバスで走ったことを知った地元の方々から「最後の記念に私たちも乗りたかった」「沈む前に故郷の風景をもう一度見たい」という要望が本陣會に届きました。「それならば」という思いで、メンバーがバスの手配やダイヤ設定、ダムへの許可申請を手伝い、地元の人たちとともに今回実施したのがバスツアー「伊良原線路線バス完全復活祭」です。

参加者は地元住民126名をはじめとして、バスマニアも含めて計143名。直売所には回数券売り場の看板を設置し、ダイヤやバス停も手作りで準備するなど、本当にバス路線が復活したような光景が広がりました。

回数券売り場の看板などが装飾された直売所おこぼう庵

回数券売り場の看板などで装飾された直売所おこぼう庵

 

おこぼう庵向かいの休憩所も歓迎ムード

おこぼう庵向かいの休憩所も歓迎ムード

 

手作りの上伊良原バス停

途中から乗り込む人たちのために、手作りの上伊良原バス停

 

今日限りのバス停とベンチも設置

バス停だけでなくベンチも設置

 

バスに乗り込む住民の方々

バスに乗り込む住民の方々

 

荒瀬橋バス停

荒瀬橋バス停は、橋の欄干に

満員の乗客を乗せて、バスはダム底までを3往復。バスの中では「ここらへんはホタルが凄かった」「ここの小学校に姉妹で通った」という地域の思い出だけでなく、「若い車掌さんなら切符買わなくても許してくれた」「朝からエンジンが始動しなくてジープで引っ張って手伝った」などというバス路線に関する思い出話も飛び交いました。

旧道を走るバス。まもなく通行止めになる区間です。

旧道を走るバス。まもなくダムの底に沈む区間です。

小学校跡地の脇を走ります。

小学校跡地の脇を走ります。

 

トーテムポールが1本だけ残っていました。

トーテムポールが1本だけ残っていました。

参加者の中には、「亡くなった親父が完成したダムを見たがっていた」と語る人や、ご主人の遺影を抱えバスの車窓を一緒に眺めていた高齢女性の姿も。さまざまな想いを抱えた人々を乗せて、バスは旧道を走りました。

降車して職員からダムの説明を聞く住民たち

降車して職員からダムの説明を聞く住民たち

「泣いても笑ってもこれが最後ですからね。いっぱい写真を撮っておきます」

「泣いても笑ってもこれが最後ですからね。いっぱい写真を撮っておきます」と何回もシャッターを切る地元の人たち

 

ツアーを盛り上げるため、山伏や天狗姿でバスの乗客たちを楽しませる演出もありました。

ツアーを盛り上げるため、山伏や天狗姿でバスの乗客たちを楽しませる演出もありました。

 

山伏が出てきた!

山伏が出てきた!

ツアーが終わりに近づいた車内では、地元主催者のひとりから決意表明も飛び出しました。

「私は生まれて63年間伊良原を出たことがありません!伊良原を愛しています。これからの伊良原の更なる発展は、まず無いでしょう。しかしこれからが伊良原の新しいスタートと思って頑張って参ります。」

早ければ今夏にも貯水が始まる伊良原ダム。今回バスで通った地区は間もなくダム湖に沈んでしまいますが、この日、自分たちの故郷をしっかりと目に焼き付けた住民の皆さんは、明るい表情でそれぞれ帰路についていました。

「砂津本陣會」の3月のオフ会時にガイドを務めてくれた住民にフォトブックを贈呈。6月のイベントではお礼に美味しい手料理が容易されていたそうです。

3月のオフ会でガイドを務めた地元の方にフォトブックを贈呈したところ、今回お礼にと手料理を提供いただきました。とても美味しかったです。

※情報は2017.6.23時点のものです

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